G2produce#9「キャンディーズ」の舞台は東京のとある石鹸工場。
昭和初期と30年代を行き来する今回のお話、最新のあらすじをご紹介致します。



銀座通り(昭和20年代)
 戦後復興のさなかにある昭和30年。向島石鹸は手作りの工場を次々と閉鎖、オートメーションによる大量生産へと切り替えていた。

  唯一残された第三工場に立花社長(山西惇)の娘・美雪(須藤理彩)が女工員のしじみ(新谷真弓)を訪ねてやってくる。遅刻してきた新入工員と勘違いされた美雪は、暗い影のある職人・渡部(長谷川朝晴)と大げんか。勢い余って工員として働くことになってしまう。

  ところがそこへ第三工場閉鎖と職人のリストラの通達。社長である父の横暴に怒る美雪は、あろうことに労働組合のリーダーとして反対運動を起こすことに。

  だが、工員は瞬間湯沸かし器の伝介(内田滋)、のんびり屋の浜田(陰山泰)、20年前の事件以来口がきけなくなってしまった横山(廣川三憲)と、役に立ちそうな者はいない。唯一、頼りになりそうな工場長・松永(竹下宏太郎)も意外な行動に。しかも、闘う相手は美雪の許婚の君島(木下政治)だ。

 そこへ助け船を出したのがラジオ東京のディレクター菅井(菅原永二)。労使交渉の場をラジオで生放送してくれることに。

 こんな騒動のなか、美雪は渡部の暗い影の奥に眠る熱い想いを感じていく。君島という許婚がありながら、渡部に心を奪われていくのを止めることができない美雪。

  だが、渡部は20年前の事件に心を閉ざしたままだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 20年前の昭和初期、社長の立花は軍の要請もあり工場のひとつを合成洗剤用に改造した。そんな流れに逆らうように第三工場の職人・柴田(久保酎吉)は「キャンディーみたいな石鹸」を作るべく、小豆島のオリーブに目をつけていた。太平洋戦争の陰が迫る中、チャンスはやってきた。宮内庁からフランス王朝御用達と同じ質の石鹸をという要請があったのだ。喜び勇んでオリーブを買いつけ、新人の渡部と徹夜で作業する柴田。

 だが、渡部が同僚の永井(草野徹)の恋人・美千子(須藤理彩・二役)に心を奪われてしまったことから、事態は意外な方向へ転がり落ちて……。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 果たして、20年前にいったいどんな事件があったのか? 二つの時間に存在する二つの三角関係のゆくえは? そして、キャンディーみたいな石鹸を作りたかった柴田の想いは成就するのか?


時代背景のことなど、まったく知らなくても十分におもしろい『キャンディーズ』ですが、
知っていれば、そのオモシロさ、5割増になります。
というわけで、お節介ながら、舞台となっている昭和10年ごろと昭和30年ごろの時代背景をご紹介しましょう。



逓信省のストライキ
(昭和15年ごろ)

昭和 9年(1934)12月には「第日本東京野球倶楽部(現・読売ジャイアンツ)が誕生し、日本初のプロ野球チームが誕生。でも、時代の空気はきな臭くなるばかりで、昭和11年(1936)には教科書にも出ている「二・二六事件」が起こっている。昭和維新をめざした青年将校たちによるこのクーデターはすぐに鎮圧されたが、翌12年(1937)には日中戦争が、そして昭和14年(1939)にはあの第2次世界大戦が始まる。いったいこれからどうなるのだろうという、不安の暗雲が社会を覆っていた時代。



サンドイッチ売り
(昭和25年ごろ)

「力道山、空手チョップーっ!」新橋駅前広場に設置された街頭テレビには2万人もの人が集まった。昭和 29年(1954)2月には力道山とシャープ兄弟のこのプロレス中継とマリリン・モンローの来日が日本を熱狂させた。11月には現在まで続くシリーズ1作めの『ゴジラ』が封切り。そして昭和30年(1955)には東京通信工業(現・ソニー)がトランジスタラジオを発売。翌31年(1956)に流行語となったのは、経済白書に書かれた「もはや戦後ではない」。戦中、戦後の苦しい時期を乗り切って、次々と新しい刺激が現れ、未来はいまよりも確実によくなるということが信じられた幸福な時代。


写真提供すべて=昭和館