2. 熱量のある役者陣と、あたたかくて熱くてやさしい演出家
——熱量ということでは、すごい役者さんがそろってますね。
福原
そうなんですよね。「ムダ遣いタイプ」っていうか(一同笑)、でも、僕はそれがいちばん好きで、舞台だけじゃなくて、なんでも「どんだけムダにしてるか」ということが魅力だという気がしてるので。「そんなにがんばんなくても、もう伝わってるよ」っていうところから、さらにアクセルを踏み込むみたいな「ムダ遣い」を、大人の技術もちゃんとある上でやったら、おもしろいんじゃないか、と思ってます。
——これだけ個性的な役者さんだと、ホンを当て書きしたくなったりしませんか?
千葉
初演のヴォードヴィルショーの作品も、役者ありき、の作品だと思うし、これだけの人が集まったら、ついつい「この人にはこんな感じ」って思いがちですよね。でも、意外とご一緒した方が少なくて。つい、共演した池田成志さんにやってほしいことが浮かんで、いろんな役に反映したりして。こんなこと、ご本人が聞いたら、怒るでしょうけど(一同笑)。でも、あんまり(当て書きしようとは)考えずに書いてますね。
福原
僕も、どの役がだれとかは、あまり聞かないで決めようかなと思ってますね。もしかしたら、千葉さんが思ってるのとは違う配役になるのかなと。みなさん、なんでもできるでしょう、って気がしてて、ぴったりの役でも、ミスマッチの役でも、どっちにしろ魅力のある役に仕立て上げていただけると信頼しているので。台本から役者さんの力を借りてどれだけ飛べるかということが大切で、初演なり、千葉さんなりに敬意を示すには、何倍にもふくらませないといけないと思うんです。別にセリフを変えるということではなくて、そのままやっても「ああ、こうなったのか」というところまで行かないと。
千葉
稽古場が想像つかないですね。稽古初日前夜はすごくドキドキして眠れないかもしれない(一同笑)。うちの劇団(猫のホテル)の面倒をみてもらったりして、福原さんの演出を経験しているんですけど、その福原さんの懐深い演出と、わがまま三昧なわれわれ役者とがどうなるか(一同爆笑)。
——福原さんの演出の魅力は?
千葉
われわれ役者に伝える言葉が、あったかくて熱くてやさしいんです。演出中は全然イスに座らないで、ずーっと立ちっぱなしで。それは、猫のホテルでは、「おまえらホントになんとかしてくれよ」と立たずにいられないってことも、もちろんあったと思うんですけど(一同笑)。ホントに熱くてあったかくて最終日は、劇団員全員が涙目で、福原さんとお別れしてましたね。
福原
僕は、役者さんに頼るタイプなんです。あたたかい言葉で、って言われたんですけど、それは昔、ある雑誌に、千葉さんのインタビュー記事が載っていて、「稽古場は、いかに役者が失敗しやすい空気をつくるかが勝負だ」っていうコメントがあったんです。それでなるべくイライラしたりしないようにしようって。僕は迷いながらやるタイプなので、役者さんが気持ちよく、「こんなのもある」って見せてくれないと止まっちゃうんですよね。あんまり頼ってるとバカだと思われるので、バレないように誘導して、楽しくやってるんです。今回も、どういうふうに頼っていこうかなって。ま、みんなケガしなければいいですね。
千葉
平地で転ぶ年齢ですからね(一同爆笑)。