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いやあ、今回、台本が難産でしたので、ストーリーの全体像をなかなか発表できなかったのですが、ようやく書き上がりましたので(8月16日現在)なるだけネタバレのないようにご紹介させて頂きます。時間はかかりましたが、そのぶん、謎とギャグが渾然一体となって、個性豊かな俳優陣が不思議なハーモニーを醸し出す、かなり面白いサスペンス・コメディーに仕上がったと自負しております。
予備知識なしで観たい。という方は以下は観劇後にお読みになってください。

【ストーリー】
 物語の舞台は、とある農村。斜面に建てられたロッジ。(※1▼
 いわくありげな男女、坂崎(佐藤アツヒロ)と美潮(田中美里)は、村長(久保酎吉)とともにこのロッジを借りて、斜面の下の畑で或る植物の実験栽培を始めようとしていた。坂崎(佐藤)には過去に秘密があるのだが、美潮(田中)と村長(久保)はそれを知りながら坂崎にはそのことを隠している様子。(※2▼
 そこに紛れ込んできたのが、暴力団組員の山田(福田転球)。彼は涼(内田慈)を誘拐したのはよかったが、肝心の身代金が奪えないまま逃避行を続けていた。この二人を村長は応募してきた農業体験希望者だと勘違いするのだが、山田から逃げ出したいはずの涼はなぜか山田と一緒に農業体験者になりすましてしまう。彼女にもなにか理由がありそうである。(※3▼

 そこに、畑を貸している斉藤夫婦(池谷のぶえ、諏訪雅)が怒鳴り込んでくる。
「村長、ひどいじゃないですか、私たちの畑に植えているのは『オオヌサ』じゃあないですか!」
二人が怒るのも無理はない。『オオヌサ』は法律で栽培と所持が禁止されている。葉はドラッグになり、芸能人や力士が逮捕されて報道を賑わせている悪名高き植物なのだ。(※4▼

 だが、村長たちは説明する。
「これは政府の許可を得た、繊維を作るための実験栽培なのだ。この品種の『オオヌサ』はドラッグにはならない」と。
そこへ広告代理店の山本(久ヶ沢徹)もやってきて「一流企業が資金援助をしてくれる」と斉藤夫婦を説得する。斉藤夫婦はいくら産業用だからといって『オオヌサ』に違いはないと渋るが、山本に弱みを握られてしぶしぶ了解する。(※5▼

 さらに『オオヌサ』を日本でも解禁にしようという運動を展開しているグループの一員である長谷川(辻修)や、農業体験者を取材したいとやってきた雑誌記者・日下(浜田信也)も現れて、状況はさらにややこしくなっていく。
 坂崎(佐藤)は、広告代理店の山本(久ヶ沢徹)と内密に何かを進めている。(※6▼
 美潮(田中)は坂崎の中三のときの同級生だというが、どうも怪しい。村長(久保)は美潮に「坂崎くんにすべてを話してはいけない」と釘を刺している。(※7▼
 山田(福田)は、栽培されているのが『オオヌサ』だと聞いて、なにやらほくそ笑んでいる。
 長谷川(辻)や日下(浜田)にも別の目的がありそうだし、円満に見える斉藤夫婦(池谷、諏訪)にも抱えている問題がある。(※8▼
 一触即発の人物関係のなか、彼らは表面上はにこやかに農作業に取り組み始める。
 そんなある日、誰ともなく「うちで育てている『オオヌサ』は吸ってもラリったりしないんでしょ?」「そうだよ」「本当に?」「じゃあ、試しに吸ってみましょうか」という話になり……。(※9▼

 ここからは事態は急展開、それぞれの秘密が明かされて、笑顔の下の本音が見えだしたとき、ロッジは修羅場へと転じていく。(※10▼
 そして大詰め。坂崎(佐藤アツヒロ)は、自らの秘密に直面し、そこに美潮(田中)の謎がからまって、絶体絶命の大ピンチ。そのピンチを救ったのは意外なことに……。

 前半は、人物関係のややこしさに笑って頂き、後半は、人物関係の秘密に戦慄していただける内容になっています。
 もちろん、そこはG2produceですので、戦慄しながらも笑えるはず。ちょっとディープな話も出てきますが、それも笑えるように描かれています。だって、人間って本当に哀しい生き物ですけど、それって最高の喜劇だと思うんですよ。ロッジに繰り広げられるそんな人間関係の面白さを充分に堪能いただければ、作者としても最高の幸せです。

【解説】
※1▲ この「斜面に建てられた」というのが意外にも物語の伏線になっています。要注意です。あとこのロッジの設計は舞台美術家の二村周作さん。彼とは初めてのお仕事ですけど、できあがったデザインはかなり気に入ってます。サスペンスとコメディーが同時進行するための装置として最高。

※2▲ 「静かじゃない大地」には複数の秘密や謎があり、それが物語が進むにつれて徐々にあばかれていくという構造になっているのですが、このアツヒロと美里ちゃん、久保酎吉さんの三人が形作る謎がメインの謎になります。これちょっと哀しい謎でもあるんですが、その秘密が解けて真実が見えたときには、これもう鳥肌もんであることは請け合います。特にラスト、アツヒロと美里ちゃんの場面が、ご覧になった皆さんの心にはどう映るのか? ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかは皆さんのジャッジにかかってくるという仕掛けです。

※3▲ 極道を演じる福田転球と、誘拐された女子高生を演じる内田慈ちゃん。けっこう怖い関西ヤクザに平然とツッコミを入れる女子高生。二人の台詞の応酬もこの舞台の見どころのひとつです。この笑える二人が、最後、ちょっぴり泣かせたりして。まさに和製「レオン」なお二人なのでした。

※4▲ 『オオヌサ』 以前はこのページでは「メネフ」と紹介しており、台本も半分までは「メネフ」と表記していたのですが、稽古が始まり、スタッフ&キャストと相談した結果『オオヌサ』に改名しました。実はこの『オオヌサ』という言葉は、物語全体からみると意味深なのですが、それは観劇後に広辞苑でお調べいただければ幸いです。

※5▲ 今回の久ヶ沢徹ちゃんは、広告代理店の人の役。これね、結構はまっています。かつてテレビ局にいた経験がある私が実際に会ってきた電通の人をモデルに、「そのいかにも広告代理店なイヤ〜なところ」だけを抽出した役なんです。イヤ〜と言っても、かなり陽気で、面白いキャラクターなんです。だからこそ、その嫌味がハマると実に面白い。サラリーマンの皆さんには身につまされる話題も出てくるのでは?

※6▲ かなりネタバレなことを書いちゃいますと、マジメに『オオヌサ』の実験栽培とその研究に取り組んでいるはずの佐藤アツヒロは、実は裏ではかなりヤバいことに手を出してしまっています。そのすべては実の妹のため。ところがその妹との関係やあれやこれやに大きな謎が隠されており……。さて、あなたはご覧になっているどの段階でその謎を解くことができますでしょうか?

※7▲ この謎を解く鍵は、中盤のなんてことのない笑える日常会話の中に隠されています。ほんとに一言も聞き漏らすことのできない舞台になっていますんで、ご注意くださいませ。

※8▲ 池谷&諏訪は、その風貌から夫婦にしたいと思ったのですが、これね、稽古場で並ぶとほんと夫婦に見えます。最初は、ほんわかとした夫婦像なんですけど、後半はかなりシビア。やっぱり強いのは女の方なのです。辻修ちゃんは『オオヌサ』という植物について熟知している役。それゆえにちょっとヤバい方向へ物語や登場人物を運んでしまうんです。でも最後は、スカッとするけど後味の悪い活躍を果たします。(その意味は本番でご確認あれ)日下を演じる浜ちゃんは、今回はかなりいつもと違う役だと思います。記者としていろいろみんなに質問するんですが、どこか意地悪で裏のある質問ばかり、その嫌らしさをご堪能ください。

※9▲ この場面は稽古していてもとっても笑える面白い場面になっています。芸達者な役者さんたちの腕の見せ所。そしてこのあとにシリアスな場面が控えているのですが、そのシリアスな場面でのアツヒロと美里ちゃんの台詞にもかなり笑えてしまうという仕掛けをご用意してあります。いや、これ以上ここに書けないのが残念。ぜひ劇場で確かめて欲しいところ。

※10▲ 前述が笑える腕の見せ所だとすると、こっちは本格的な演技という意味での腕の見せ所。今回の役者さんたちは笑いだけではなく、こういうこともみんなキチンとやれるのね、と稽古場では私は本当に感心して見ております。みんなの心の痛さがじんじん伝わってくる。この修羅場でチームは崩壊にむかって転げ落ちていくわけです。そういうとてつもないギリギリのところに追い込まれてるにも関わらず、それでも希望を見失わない魂に触れたとき、人って感動するんだなあ、と我ながら感じさせるクライマックスです。


ところで、今回は本当に構想期間に時間がかかりました。実質3ヶ月くらいかかったんじゃないでしょうか。でもいざ、書き始めたら、洪水のように台詞があふれ出てきて、10日間で書き上げてしまいました。時間をかけた構成と、短時間でバッと書いた勢いのある台詞、かなりお楽しみ頂けると信じております。ぜひ劇場にてお会いしましょう。