![]() 極道が運営する老人ホーム(!?)を舞台にくりひろげられる前代未聞の介護コメディー『ロング・ロスト・フレンド』。常に「笑い」にこだわりを持ってきたG2が、伊東四朗をはじめ「笑い」には一家言あるキャスト揃いの「西荻の会」とタッグを組むことに。コメディシーンの大御所・伊東四朗の語る喜劇観とは? そもそも「西荻の会」ってどんな集まり? がぜん注目の『ロング・ロスト・フレンド』へのご招待! |
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![]() ——『ロングロストフレンド』の台本を読んだ感想を。 |
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伊東 |
私の役が、何者かわからないところが、ミステリアスでいい。どの役をやりたいかと聞かれたら、市川勇のボケ老人の役がやりたいんだけど(笑)。 |
——伊東さんが役を選ぶ基準は何ですか? |
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伊東 | なんかこう、やってみたいっていう衝動に駆られるものですね。自分に近くない役のほうがいい。自分に近いからやりやすいっていう人がいるけど、私はダメですね。違ってる方がずっといい。遠い方がおもしろい。今回の台本では、あっち行ったりこっち行ったりして、ひとり語りするところがね、難しかろうなぁと思いつつ、おもしろいなと。(本番を観ていただければ、「これか!」とおわかりになると思います。ネタばれになるので、いまのところはここまでで)でも一方では、大変そうだから、できれば、なければいいなと(一同笑)思いながら読みましたね。(佐藤)B作もミステリアスな役で、同じ衣装のまま回想に入っていくシーンなんかがあって、演出でおもしろくなるのかな、と思うし。 |
——今回のユニットが「西荻の会」という、西荻窪での飲み会から生まれたということですが…… |
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伊東 | ただの飲む会なんですけど、前に「伊東さんがよく、B作さんや角野(卓造)さんと飲んでいる<西荻の会>って、あれは、なんなんですか?」って質問があって「そのメンバーで芝居やったらおもしろい」って言われたんです。そういうことを、会のメンバーが言い出さない、っていうところがいいでしょ(一同爆笑)。芝居をやろうなんて、誰もそういうことに気がつかない。 |
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——「飲みに行きましょう」と声をかけられるのは、どなたです? |
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伊東 | どなたって、これから先は敬称略します。角野ですね。この前にやったときは、みっちゃん(あめくみちこ)が「今日はここまで」って言ったら終わりにしよう、って、飲む前に言ってたんですけど、6時に始まって終わったのが朝の3時(一同笑)。おバカですよ。会員が、私と角野、B作、あめく、(松金)よね子。で、1回だけ来た高橋克実が準会員。そもそもはね、テレビ東京のドラマで、私の上司役で角野が出てましてね、ある回、B作がゲストで来たんですよ。あとワンシーンで終わるってときに、あの二人は先に終わったので帰ったんですが。次の日の撮影のときに、「きのう、あの二人で飲みに行ったみたいですよ」なんて余計なことを言う奴がいて、二人に「きのう、どっか行ったんだって?」「ええ、行きました」「なんで、オレ誘わないの?おかしいじゃん。オレ、あとワンシーンで終わるんだから」ってからんでみせたりして(一同笑)。で、「どこ行ったの?」って聞いたら、西荻の寿司屋へ行って飲んだって話でさ、「じゃ、今度連れてって」って訳で始まったの。だから集まるのは、いつもその寿司屋なんだよ。で、寿司屋のあとカラオケへ行って歌いまくって、3時ですね(一同笑)。 |
![]() ——G2も飲むのは好きなんですけど、今回G2に期待されることはなんですか? |
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伊東 | そうですねぇ。私には無い若い血を、輸血してもらいたい(一同笑)ってことでしょうかね。(G2は)いくつですか? |
——51です。 |
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伊東 | え! 若くないんだ。オレ、もっと若いかと思ってた。じゃ、あんまり輸血してもしょうがないんだ(一同笑)。 |
——では、「若い血」以外で期待されることは? |
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伊東 | 未知の世界だから、期待と不安が半々っていうところですね。 |
——伊東さんのキャリアからすれば、新しく未知のことをやるのに、不安なんて、ないんじゃないですか? |
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伊東 | いや、いつだって不安はありますよ。その不安がまた、いいんですがね。不安がないと、つまんないんですよ。順調とか順風満帆からは何も生まれない。不安の中からいろんなものが出てくるんでしょう。今までやってきたなかで、安心してやったものなんて、一個もないですね。 |
——なかでも一番大変だったのは? |
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伊東 | 石坂浩二が演出した『十二人の怒れる男』。これが一番不安だったですね。パルコパート3でやったんですけど、真ん中にテーブルを置いて、まわりにお客さんを入れるっていう形で、舞台っていうより、室内で芝居をしている感じ。陪審員室での話なので、実にうまくあそこ(パルコパート3)を使った芝居だったんですよ。全部が裁判用語だし、始まったら、終わるまで全員が出ずっぱりなんですよ。セリフを間違えると、話が成り立たなくなってしまう。自分も不安だけど、人のことも心配で、あれが一番緊張したかなぁ。あと、三谷(幸喜)氏とやった芝居(『社長放浪記』)は、一人二役で、ホントにどっちやってるか、わかんなくなるときがあるんですよ。三宅(裕司)氏が「どっちをやってると思います?」ってな目をしてオレを見てるんだから(一同笑)。「わかってるよ」ってな顔をして返すんだけどね。ま、それは喜劇だから、多少のことは許されるんだけど、裁判劇のほうは、絶対許されない。「こんなの、もうやらないよ」と言ったのに、再々演までして、あんだけ再演することを反対したオレがなんでまたここにいるのかなー、なんて思ってる。不思議ですねぇ、芝居って。 |
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