
——喜劇は、見終わったあと劇場を出て駅に着くまでに忘れてしまうようなのが理想、とおっしゃってますが、忘れてしまっていい、という潔さはどこから来るんでしょう?
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伊東
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私のポリシーなんですけどね。あんまり、テーマがある喜劇ってやりたくないんです。それから、VTRで残っている昔のものも見てほしくないってのも、あるんですよ。VTRは誰かの意志が入って撮って編集するわけでしょう? 見ていると、ここはしゃべってる人じゃなくて、聞いている人のリアクションの顔を撮ってもらいたい、とか我侭な不満ばかり出てくるんですよ。舞台なら、お客さんが客席で自分勝手にカット割りをしてくれるわけですよ。それに私は、喜劇はドキュメントだと思っているので。
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——ドキュメント、ですか?
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伊東 |
感動するドラマとかね、反戦映画だとか、そういったテーマ性の強いものは、いつ見てもわかる普遍的なものだと思うんですけど、喜劇というのは、そのときに見てないとダメなんですよ。昔、僕が見て大笑いしていたエノケン(榎本健一)さんや(古川)ロッパさんの映画を、今見ると、いまひとつと感じるのは、そのときと今とは時代がまったく違うから。何年か前にやった芝居をそのままやってもダメなんですよ。同じセリフなのに、違うんです。それは年代で違うんだけど、地域でも違う。同じ新宿でも、サザンシアターと紀伊國屋ホールだって違いますからね。いったい何なんだろうっていうぐらい違う。それを一番感じるのが、喜劇なんですよ。悲劇や感動するものは、(地域や時代によって)そんなには変わらないような気が、僕はするんです。喜劇は、おんなじ劇場でやってても、日によって違う。モニターから聞こえてくる開演前の客席のガヤガヤで、もう今日は違うぞっていうことが、わかりますからね。なのに、昨日と同じようにやったんじゃ、不親切だと思うんですよ。それを早く察知しないといけないんでしょうね。そういう意味で、喜劇って一番難しいジャンルだろうと思いますね。
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伊東 |
いまはテレビで喜劇をつくるのは難しいでしょう? 最後までテレビを見てくれる人が少ないもん。最初のスジをふるところでいなくなっちゃったら、どうしようもないですからね。電話があったり、鍋が煮立ったりして台所に立ったりしたら、それに文句は言えませんから。ただ舞台は、入ってきたら、よっぽどのことがない限り、最後までいてくれるんでね。ちゃんとスジをふったりすることができる。それがあとで効いてくる——私は喜劇って、そういうもんだと思う。笑わせようとするんじゃなくて、ふつうのしゃべりが効いてくるっていう喜劇が好きですね。ただ、「おはよう」っていうセリフにしても、あいつはめったに挨拶をしたことがないんだっていうことをふってあったら、「おはよう」って言っただけで笑っちゃうんだよね。それを(声を高くして)「オハヨ~」なんて言っちゃダメなんだよね。ふつうの「おはよう」でいいわけです。そういう喜劇がやりたいと思っているんですよ。そういうおもしろさのないホンだと、どうしてもアドリブを言わなきゃならなくなってくる。だって、喜劇だっていうのにお客さんが笑わないから、結局、みんなでアドリブを言い出しちゃうっていうのは、最悪ですね。ベースはやっぱりホンだと思ってます。
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——では、今回の芝居を見に来ようと思っているみなさんへ、メッセージをお願いします。
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伊東 |
どういう気持ちなんでしょうね? これを見に来ようと思う人って(一同爆笑)。
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——伊東さんとG2が初めて組んで、どんな芝居になるんだろうって……
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伊東 |
私と組んでっていうより、角野もB作も、うるさいですよ。いやいや、それはまあ冗談ですけど(一同笑)。なんとなく見たいでしょ? このメンバーがいったい何をやるのかって。プロデュースしたわけでも、なんでもなくて、だいたいが、ただの飲み仲間なんだから……かなり激突してる話なので、飲んだくれ集団がどう激突するのか、見にきてほしいっていうことですかねー。そこへ持ってきて、作・演出家も飲んだくれだって、聞いたので、どうなることか。実現するかどうか、まだわかりませんよ(一同爆笑)。
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