初めての読み合わせでも役が立ち上がってくる
しみるような寒さが空からおりてくるような都内某所。この日は『紅姉妹』の最初の台本読み合わせ。誰がどの役をやるのかは、まだ決まっていないので、今日はとりあえず仮の配役で。

それでも、読み始めると、3人ともどんどん役に入り込んだセリフまわしになり、やりとりのリズムも変幻自在。ただすわって読んでいるだけで、それも初めての読み合わせで、役が生き生きと立ち上がってくるのは、ちょっと鳥肌ものだ。

別の稽古場から遅れてやってきたG2が、ときおり物語に引き込まれ大笑いしたりして、聞いている。読み終わって気がついたら、1時間半。あっと言う間である。


ニューヨークなのに和のテイスト
物語は、現代のニューヨークから過去へ過去へと時をさかのぼって進んでいく。姉妹の契りを結んだ3人の過去が、しだいに明かされるというのが、物語の大きなわく組みになっている。

篠井さんが言う。「女優さんがやるのは難しいだろうけど、われわれ(3軒茶屋婦人会)ならではの、楽しい脚本ね。わかぎ(ゑふ)さんらしい和の部分もあって」
そう、舞台はニューヨークなのに、和のテイストがふんだんに盛り込まれているのがおもしろい。
大谷さんがアイデアを出す。「シーンごとに経済状態がよくなったり、悪くなったりというのが、見えるとおもしろいね」
深沢さんも付け加える。「お芝居でも生活感を出していけるんじゃない?」
なるほど。3軒茶屋婦人会の、あの生活感あふれる人間模様は、こんなふうにして出来上がっていくのか……。


3軒茶屋婦人会がつくりだす世界
G2が、配役について相談を持ちかける。「今回の読み合わせは、わりと順当な配役でやってもらったんだけど、入れ替えたほうがおもしろいような気もするし。どうしましょうか」。
「誰が誰をやっても成り立つと思うんだけど、『私がこの役をやるんだったら、こういうふうにしたい』っていうことがあるよね」と篠井さん。
「もっとドロドロしていたり、どう考えても、この3人が一緒に暮らしたり、わかり合えたりしないだろう、くらいな性質や関係がいいかもね」と大谷さん。
「みんな性格がぜんぜん違って、仲も悪いのよね。でも、勘ちがいみたいなことが、人を結びつけるってこと、あるじゃない。そういう感じがあっても、おもしろいかも」と言う深沢さんに、篠井さんが「そうそう。生きてる間は、ひどいこと言ってたりするのに、死んだら『いい人だったのにねー』って言ったり。人って、そういうもんよね」と。

わかりますか? もうそこに、3軒茶屋婦人会の世界が現れ出てくるこの感じ……人の心の醜い部分や弱い部分を、舞台上に繰り広げて見せていながら、それらがとてもキュートなものに見えてくる感じ……いまから楽しみです。