——3軒茶屋婦人会の3人は、以前からよくご存じなんですか?

 もちろん。私は、もともと自由劇場(オンシアター自由劇場)を観て、小劇場の世界に飛び込んだので、大谷(亮介)さんは、あこがれの劇団の、あこがれの人のひとりだったんです。
(大谷さんが、遠くでこれを聞いて、照れ笑い)
昔は、もっと細くてかっこよかったのよ(一同笑)。
それから、東京で劇団の研究生をやっていたときに、日芸(日本大学藝術学部)の子と一緒に芝居をしたんですけど、それが花組(花組芝居)にいた木原実くん。あっちゃん(深沢敦)の先輩で、英介くん(篠井英介)のひとつ下になるのかな? だから2人は、よく知ってる劇団の子、って感じだった。
大谷さんは、ホントにあこがれの人だった。90年代になって、一緒に芝居したり、うちの劇団(リリパット・アーミー)に来てもらうようになって、いい意味で幻想は崩れ、新しくリスペクできる存在になりましたね。
3人に共通して、私が思っていることは、「こんなに芝居が好きな人がいるんだ!」ということ。この業界のなかでも、本当に芝居が好きな人たちですね。

——その3人が、3軒茶屋婦人会というユニットを立ち上げて、最初の作品が『ヴァニティーズ』。

拝見しましたよ。いつもあちこちで芝居をしてるのに、3人で寄ってたかって、まだ芝居をしたいんだー(笑)って。
G2も長い知り合いでよく知ってるから、その演出をまたG2に頼むなんて、なんてコラボなんだろうって思いました。 その作品がまた『ヴァニティーズ』ですからね、アチャーって(笑)。あのときに、チアリーディングをつけてた子も知ってたので、話を聞いて、よくもまあ、この年になって、そんなものに挑戦しやがるな、って(笑)。でも、おもしろかった。演劇人のなかでも、リスペクトしたい人たちだし、リスペクトできる人たちですね。



——わかぎさんは、歌舞伎にも造詣が深くて、男がやる女の芝居というのも……

まったく抵抗がないんですよ。子どものころに最初に好きになったのが、歌舞伎と文楽だったんで、俳優が役をやるときの性別っていうものに対する垣根が、私はもともと低いんですね。なので、3茶のメンバーに対しても、そういうことは全然思わないんです。

——今回、脚本を書いていただくことになったきっっかけは?

最初は、あっちゃんから『細雪』を3軒茶屋婦人会でやりたい、って聞いてたんです。『細雪』って四人姉妹じゃないですか。一人抜いて、ほかの三人がずっと噂をしてるって話にしたらどうだろう、って考えたりして用意はしてたんです。そしたら、「やっぱり、オリジナルにして」「えっ!」って。たぶん単純に、着物芝居がしたかったんだなー(笑)。

——その着物芝居の舞台が、ニューヨークになったのは?

オリジナルにしようという話になったとき、
「それやったら、いままで全然見たことがない芝居が見たい。私が見てみたいものを書きたい」って思ったんです。
高校生ぐらいのとき、小説とか書いて遊ぶような年頃のときに、ダンナさんが全員兄弟のアメリカ人で、奥さんがそれぞれ別々の国の人っていう話を考えたの。アメリカの人って、結婚しても「結婚したんだ」とか言って、結婚前に彼女を、両親や兄弟に紹介しなかったりするでしょ。電話で「ママ、あたし結婚するの」みたいな話が、映画や小説によくあるじゃないですか。だから、三人兄弟がいて、その兄弟が事故で亡くなって初めて、3人の奥さんが会うっていう話は、ありえるじゃないですか。言葉は通じないし、異文化だし、でも自分たちは姉妹……どうしたらいいんだろう、って、おもしろいんじゃないかな、って。
日本人妻は当然、私がやって、アメリカ人妻がジョディ・フォスター……って、すごい幻想を抱いていた高校生だったんです。それを思い出して、ひとりの男の人にかかわって、なぜか三姉妹になっちゃう人たちの話を書くとおもしろいんじゃないかな、って思ったのがひとつ。
それと、自分でいちばん観たかったのが、現在から過去にどんどん振り返っていくお芝居。

——その、時間を遡っていくという物語の構成は、どうやって生まれたんですか?

『お正月』っていうお芝居で、明治5年から10年飛ばしで100年間のことをやったんですけど、それを逆さまから観たらどうなるんだろう、って思ったことがあるんです。ただ、そんなことができる役者がいるかな、って。おばあちゃんから徐々に若返っていく芝居ができて、しかもリアルに見えなきゃいけない……よっぽどうまくないと、できない……映画のマジックではなくて、目の前で俳優がそれをやったら、どんな感じなんだろう、って思ってたんです。
それで、この『紅姉妹』を書く前に、自分の作品を全部、逆さまに読んでみたんです。そしたら、意外と観たらおもしろいのかも、って思って、最初の打ち合わせのときに、「観たことがない芝居をやってみたいんだけど……時間が逆さまになるのってどう?」って言ったら、3人が「いいかも!」って言ったから、じゃ、書いてみようと。でも、すっごい苦労しました。

——え、どうしてですか?

時間軸に沿って、最初から全部の話を書いていったほうがいいのかな、って書き出したんだけど、「いや、違うなー」と思って、今度はうしろ(現在)から書いて、一場を書いては、前の場面に反映し、また一場書いては、前の場面に手を入れて、って、そういうのをやったので、いつもよりは苦労をしました。
登場人物にとっては、時間軸に沿ってちゃんと時間が経過するわけだし、でも、次の場面になると10年若いわけだから(笑)……自分のなかでも、おもしろい作業でしたね。



——今日は、稽古をご覧になって、どうでした?

もうお預けしたホンだし、これからどんどん性格づけされていくんだろうし、全然心配はしていないんですけど(笑)。
想定していたよりも、すごいコメディーになりそうだな、って今日は思いました。

——「想定していたより」と言うと?

お客さんがニヤってするようなものになるのかな、って私は思ってたんですけど、「あ、そこまで、ちゃんと、しっかり、シチュエーションコメディーにするんだ」と思って(笑)。「ああ、なるほど」って。時間がさかのぼっていくので、結果は、お客さんが先に知っているわけで、役者だけが知らない芝居をしていくわけじゃないですか。それにシラを切って、コメディーにしちゃうのは、おもしろいなーって。

——久しぶりにご覧になったG2の演出は?

しつこくなってるよね(笑)。いままでも、しつこかったけど、それは、彼のいいところだし、昔は、男の子らしいこだわりで、よくこんなことに、って思ったけど。おばちゃん化したのかな、いまは、より的確なことにしつこくなってる。いい意味で、よく気がつくおばちゃんになってるね(笑)。

——では、3軒茶屋婦人会にエールを。

いままで友達だった、3軒茶屋婦人会のホンを、書くとは思ってなかったので、とてもうれしい。自分が演劇をやってきたなかでも、とてもうれしい事件なので、ぜひ成功させてほしいと思います。G2とも仕事を一緒にするのは、8年ぶりぐらいなんです。私を含めて5人が同世代で、ちょうどいい時期だと思うんです。50前後って、人生で経験も応用力もついてるはずだから(爆笑)、自分たちが、「いいコラボになったね」って言われるようなものにしてほしいと思います。

——最後に、観に来られる皆さんへメッセージを。

いままでに観たことがないものを、お見せできると思います。観たことがなかったものを観られた、っていう気持ちで帰っていただけるようにしたいと思っています。うちの自信作でございます(笑)。 ぜひ、お楽しみくださいませ。