江戸時代、湯屋の二階は、きょうも湯上がりの客たちが寄り合って騒々しい。
相撲をとるもの、義太夫の稽古をはじめるもの。噂話をするもの。
そんな噂話のひとつにこんなのがあった。「白木屋の一人娘、おせつが結納をするらしい」
それを聞いてがく然としたのは、徳三郎である。おせつは、自分と将来の約束を交わしたはずではなかったか。
奉公人と主人の娘ではしょせん叶わぬ恋か。思わずカッとなって刀屋へ飛び込み「二人ほど切れるのを売ってくれ」
刀屋は「事情を聞こうじゃありませんか?」それまでのいきさつを話はじめる徳三郎。
ある夜、たまたま別の理由で店から閉め出しを食ってしまった徳三郎とおせつは、仕方なく徳三郎の叔父の住む霊岸島へ。
「徳三郎が女を連れ込んだ」と勘違いした叔父夫婦は、二人を二階へ押し上げる。二階にはふとんがひと組だけ。
ふとんに境界線を引いて、そこで眠ろうとする二人だが、降りしきる雨とともに雷が鳴るに至って……。
一緒になりたい二人だが、白木屋の主人・庄左衛門は、おせつを職人・彦六と結婚させようと画策。
おせつが家出してしまったので、その結婚は延期になったものの、おせつは徳三郎が熟女にたぶらかされている現場を見て、家へ帰ってしまう。
なんとかしたい徳三郎だが、その熟女の家に紙入れを忘れていったために、ますます窮地に陥る。後輩・新どんに恋のキュービッド役を頼むも、新どんは簡単に飴玉で買収され、その大切な伝言はおせつには伝わらない。
いっぽう、彦六は、前妻・菊と「後添えはもらわない。もしも再婚したら初夜に化けて出てくればいい」と約束していたのだが、妻・菊に、幽霊でもいいから会いたいという思いから、おせつとの婚約を了解してしまう。おせつも、優しい彦六に心を奪われていく。
徳三郎は、奮闘しようとしても空回り、頼りになるはずの叔父も、女房を損料屋の丈八に寝取られてしまい意気消沈で役に立たない。
八方手詰まりになった徳三郎は、ついに身投げをしようと橋の上にやってくるが……そこに意外な人物が。
果たして、徳三郎の恋は成就するのか? そしてそれは一体、どんな方法で?