▼#1
いざシカゴへ!
▼#2
シカゴ乗り物三昧
▼#3
ライト・イン・ザ・ピアッツア!
▼#4
ニューヨーク上空380m
▼#5
中村座N.Y.公演
▼#6
怒濤の17時間
▼#7
思いをめぐらせて
|
 早いもので、新橋演舞場の「憑神」もあと数公演を残すばかり。
みんな観に来てねっ! って言いたいんだけど、知りあいに貧乏役者が多いし、チケット代高いし、2500円のB席は三階だし……。と思っていたのですが、今日、三階で見ていた権藤くんたちが「面白いっ!」って興奮してたから、どうやら三階席で見ても充分楽しめるようです。お金のない方はB席でお求めください。
さて、NYの平成中村座でした。
リンカーンセンターにはいくつかの劇場があって、第3回でご紹介した「The Light in the Piazza」もこの中のビビアン・ビューモント・シアターで上演されていました。(こういう偶然の一致って、好きなんですよねえ。きっとなにか縁がある)ただ、中村座は、その劇場ではなく、エブリ・フィッシャー・ホールでの上演。

劇場の回りには、ドサ回りの旅の一座よろしく役者の名前を書いた幟(のぼり)が立っており、いきなりジャパニーズ風情に巻き込まれます。※クリックすると拡大
今回のリンカーンセンターのフィスティバルのシンボルマークもカブキメイクって感じで、やはり「法界坊」がフェスのメインの出し物なのですな。
劇場に入ると、うーん、日本だとどの劇場の客席に似てるかなー。シアターアプルの間口と、ル・テアトル銀座の奥行き。印象としては長細く、ゆるやかなスロープ。両サイドには提灯がずらりと吊ってあって、歌舞伎小屋の風情を少しでも出そうという努力。ただ、あまりに客席が長いので、花道はサイドの出入り口から飛び出して来てL字を描いて本舞台へ。
客席は、前回も書きましたが、日本人(米在住の人も含め)がほとんど。金髪率25%っていう雰囲気。ちらりほらりと著名人の顔も。
 
前回も載せましたが、
Lincoln Center Festival 2007のパンフレット表紙(左)と、
パンフレット内、平成中村座の案内ページ(右)
拍子木が鳴って、定式幕が引かれていきますってえと、なぜかひとりの黒子が立っている。よく見れば演出家の串田氏。英語で「法界坊」の人物関係を説明し始める。なるほどね。人物関係さえ理解してしまえば、言葉がわからなくても見ているだけでわかる場面の多い作品。
英語の台詞があるという事前情報を得ていましたが、結局、この冒頭の口上以外は、英語を話すのは法界坊演じる勘三郎さんだけ。それも、要所要所のオイシイ瞬間に。ボクらでもわかるような英語がほとんどですが、分からない台詞もあり、日本人にとってはそこがストレスか。翻訳はどなたがしたのか知らないが、センスある英訳。英語になるたびに爆笑を誘っていた。
ボクが好きだったのは、この法界坊が時々話す英語を、橋之助さんが全く理解できない芝居をするところ。「お主は何を言うておる?」とばかりに「ぼかん」とした表情で、目が点、静止状態になって、何度も笑ってしまった。
「法界坊」ってある意味、歌舞伎的なエンターティンメント満載の演目。1幕前半が「スラップスティック・コメディー」後半が「情念ドラマと殺陣」2幕が「舞踊」と、各種取りそろえてお贈りする次第。
数年前に見た歌舞伎座での公演も、勘三郎さんの法界坊が藤山寛美さんを彷彿として、憎めない悪者を演じてた。そして2幕では歌舞伎の伝統を見せつけるというような構成。
NYヴァージョンでは、2幕の演出が際だっていた。今までのやり方をかなぐり捨てて、歌舞伎が全世界に通じる理由のひとつ「かぶく」姿勢で、攻めの演出だった。
法界坊の亡霊を封じ込めるために、橋之助さんが巻物を手に妖術をしかける。っていうエンディングで、背景の海の絵が、バラバラにわかれて、動き回り、しまいには、それを使って「戸板乗り」よろしく、中空高く、橋之助さんが見得を切り、だっと飛び降りる。などなど、良い意味での「こけおどし」がたっぷりと効いていて鳥肌ものでした。
鳥肌と言えば、今、歌舞伎界でも、勘三郎&橋之助 の二人揃っての見得切りほど鳥肌なものはなかろうと思う。平成中村座ではそれを味わえるのが、また極上の楽しみなのである。
終演後、楽屋に橋之助さんを訪ねると、「今から打ち上げなんだけれど、3時まで空いている店があるから、そこで待ってて」とのこと。
橋之助さんのマネージャーさんやら、ウチのスタッフやらその他何人かでパスタ食ったりしながら飲んで待つこと数時間。待っている人たちにも睡魔が襲ってくるわ、その店も実は2時で閉店だわ、で結局、橋之助さんを待つことを断念して解散。それぞれホテルに戻りました。
ベッドで眠り始めた時、電話のベルが鳴る。出ると橋之助さんの声「寝てた〜?」「寝てました〜」「降りてきて、ロビーで待ってるから」時計を見ると午前3時。なんて律儀な人だ。
ロビーに降りていくと、屈託のないパッと花開くような笑顔で待ちかまえる橋之助さん。なんて元気な人だ。2ステやって打ち上げを終えた人とは思えない。
結局、朝5時まで飲みましたよ。あまりにも眠くて、出かける前にカメラを持って行くのを忘れ、この明け方の出来事については写真が撮れてません。不覚。
翌朝、こんどは午前7時に目覚ましが鳴る。ひゃー。2時間しか寝てないよー。でも、今日は、朝からNY半日観光ツアーを予約していたのでした。

ニューヨークの定番と言えば。自由の女神。

国際連合本部にあるモニュメント「発射不能の銃」
この観光ツアーが終了したのが、午後3時。そういうわけで私は、平成中村座終演後、ほとんど眠らずに怒濤の17時間を過ごしたというわけです。
さて、次回は、いよいよ最終回。
ブロードウェイのミュージカル視察や、異常なまでの持ち物検査など、最新NY事情をとりまとめてお贈りします。

次回、G2夜を往く?
←#5/▲ /#7→
|
【キーワード】
『憑神』

権藤くん
「飛ぶ教室」
の権藤昌弘(ごんどうまさひろ)くん。『ツグノフの森』では、ペラペラ役をぺらぺらっと演じました。
『The Light in The Piazza』

名作ミュージカルをG2が演出。
シアターアプル
東京は新宿歌舞伎町にある劇場。座席図が見れるHPはこちら
ル テアトル銀座
やはり、東京は銀座にある劇場さんです。ルとテのあいだが気になります。こちらのHPで座席図見れます。
演出家の串田氏
串田和美(くしだかずよし)
さん。俳優であり、数々の作品をてがける演出家。平成中村座『法界坊』の演出を担当。
自由の女神
1886年にアメリカ合衆国独立100周年を記念してフランスより贈呈されたもの。昔は像の中を登ることが出来たのですが、現在は保安上の問題から登ることができないそうです。
「発射不能の銃」
ルクセンブルグ政府が国連に寄贈したモニュメント。平和への願いが込められています。
ほかにも、国連には各国から寄贈されたものが沢山展示されていて、日本からは「日本の平和の鐘」が寄贈されて展示されています。
|